研修報告

令和4年度 第3回 青年部会研修会
『事業継承は諸刃の剣』
~実体験したピンチとチャンス全て語ります~

【期日】令和5年3月9日(木)13時00分~16時00分
【講師】株式会社 明治クッカー
    代表取締役 西原 亮 氏

 社会福祉法人を取り巻く社会・環境が大きく変わる中、社会福祉法人には改めて安定的、継続的な事業運営が求められています。そのためにどの法人においても避けては通れない事業継承は課題の一つであります。人材不足、後継者不足が取り上げられることの多い福祉分野ですが、講師の西原氏が10年前に牛乳配達業を継承した時からこれまでの間、失敗を含めて様々な課題を乗り越えてきたそうです。この度の研修会では、様々な経験を具体的に語って頂きました。

 今回の研修会は、千葉県内の新型コロナウイルス新規感染者が減少傾向であることを踏まえ、感染防止対策を行い、オークラ千葉ホテルにて参集型で開催致しました。21名の会員の方に加え、非会員の方も23名ご参加頂き、誠に有難う御座いました。

 講師の西原氏は、現在、千葉県市川市を中心に「株式会社明治クッカー(牛乳配達業)」を経営し、「お客様にハピネスをお届けするために私たちのハピネスを追求し続ける」というキーワードを掲げ、社員の幸せを追求する経営を志向するなど、多くの人々が抱く“町の牛乳屋さん”のイメージを変えるような取り組みを行っておられます。

 10年前に家業の牛乳配達業を2代目として事業継承した際は、訪問(ピンポン)営業や借入金の返済、仕組みゼロ、年収240万円、上司は自分一人で従業員教育は挨拶から行わなければならない現状に当初は「後悔」からスタートしたそうです。従業員は50歳以上が15%、60歳以上が30%、70歳以上が40%。「世の中にある様々な仕事から牛乳配達をだれが選ぶのだろうか」、牛乳配達業は「とても朝が早い」「休めない」「給料が安い」「イメージが古い」「体力的に辛い」「自慢できない」等々の理由で仕事として誰も選ばないのではないかと感じたそうです。また、古い体質であった為、世間では当たり前のことがこの業界では革新的になる状況であり、横領や事故、解約増加等の問題も発生する状況の中、会社のビジョンや経営計画の作成し、従業員と共有することを試みるも受け手に受け皿なし。親会社との交渉を試みるも結果が全て。そこで“あるべき論”ではなく“同じ釜の飯”、同じ目線とは同じ苦労を体感することに気が付いたそうです。ビジョンは従業員がよりどころにする行動指針であることを再認識する機会になったとのことです。コンサル会社に勤務していた時には当然わかっていた“あるべき論”経営した途端に実利を考えてしまい、大切なことを見失っていたそうです。ビジョンには根拠は必要なく、言い続けることが大切である。トップがビジョンに添う行動を支援し続けることが大切であると実感したそうです。

 事業継承2年目から6年目については、新卒6名採用するも「考えることが95%」、「実行が5%」であった為、毎月赤字が200万円。新規契約者が増えても解約者が増える状態(純増しない)。結果的に不幸なお客様を作る状態が続いたそうです。そこで、西原氏は“考える”は“実行”して初めて意味を成すことであることを再認識したそうです。いくら営業の効率性や生産性を考えても実行しなければ何もならないということです。また、この時期にリストラの後悔も経験したそうです。

 事業継承7年目から10年目(現在)は、ビジョンの大切さを実感し、お客様に対する考えを「お客様にご迷惑をかけない」ということを徹底し、事業継承は「熱い想いや技術を次の世代へ繋ぐこと」と考えるようになったそうです。また、事例を通して、大切なのは継承元の経営者の想いであり、想い先行型で取り組むことが重要であると感じたそうです。また、この時期には、契約時の確認不足や想いに押されて損失を招いた失敗を経験したとのことです。普段は聞くことのできない失敗や後悔、経験を踏まえた貴重なお話を研修会で聞くことができました。

 第2部では、講師の西村氏と千葉県社会福祉法人経営者協議会青年部会の部会長 武村潤一氏(社会福祉法人 穏寿会 常務理事)、副部会長 脇坂和弘氏(社会福祉法人 金谷温凊会 法人本部長)の立場の異なる3者でトークセッションを実施致しました。参加者からの質問にも正直にお応え頂き、自法人の現状や考え方、取り組みや今後の展望をそれぞれの立場からお話頂きました。興味深いトークセッションとなり、参加者の皆様からは、とても参考になったとお声を頂きました。

社会福祉法人 千葉県福祉援護会
中澤 信人